• 中野 裕弓
  • 2018.10.01

「食」 中野裕弓

「食欲の秋」ですね。

私は食卓で手作りの料理を囲んで、
人々と集うのが大好きです。

つまり私にとって「食」とは、
おもてなしということでした。

若い頃、台湾で育った母は
台湾流に大皿でテーブルに
乗り切れないほど沢山の中華料理を作って
お客様をもてなすのが得意でした。

ですから来客のある日には、
我が家の特大の中華鍋には
あふれんばかりの特製ママビーフンがありました。
懐かしく思い出す幸せの光景です。

お腹いっぱいになった後でも お客様がお帰りの時には、
特製ビーフンを詰めて皆さんのお土産にするのが習わしでした。

そのビーフンは翌日、少しお椀に取り、
お醤油少々と熱いお湯をはって
“汁ビーフン”にするといいという
レシピ付きで。

母のビーフンは台湾の新竹の乾燥麺に具沢山。
醤油とニンニクで下味をつけた豚肉、
干しエビ、ニラ、もやし、
時にキャベツ、人参、
それにナルトのピンク色もありました。

親戚中でも評判で誰かの家で集う時は、
母は朝早くからいっぱい仕込んで
持って行って喜ばれました。

この味は中野家の母の味。
母の味をまるごと習得しようと20年くらい前に
母の料理するところを
インタビュー形式でビデオに収めておきました。
編集し直して一家に引き継がれる
料理番組に仕上げておきたいものです。

お陰で私も母の味を受け継ぐことができて、
その後、私の家でのゆんたくには
欠かせないメニューになりました。
もちろん、お土産のビーフンつきです。

ある時、我が家ゆんたくの常連さんが、
初めて台湾に行き、
あちらのビーフンを食べ歩いたそうです。
私の味に慣れていた彼女から、
帰国後、「ろみママのビーフンが一番好き」と
言ってくれて嬉しかったのを思い出します。

中華料理では食事時間に
不意の来客があっても慌てることなく、
お箸を持ってテーブルを囲めば
いつでも何人でも食事ができます。
大皿料理ゆえですね。

子どもの頃、招かれた友人の家では
“日本式”でしたから
一人ずつのお皿によそわれた料理の数々。

やはり食事時に飛び入りというわけにはいきませんね。
もともと一人一人お膳が別だった日本の食事文化と、
大陸的な中華式食事の違いを感じました。

もう一人、食に関して影響を受けた人がいます。

18歳でイギリスに渡った時、
ロンドンで家族のように面倒を見てくださった
ローマンさん一家。
お父さんのDonはバッキンガム宮殿の近くにあった
小さな劇場のマネージャーで、
家族3人は劇場の屋上の一部にお住まいで、
さほど広くないアパートにはこれまた小さなキッチンがありました。

そこはお母さんのJillの料理の魔法の現場。

世界中からのお客さまに、イギリスの料理だけでなく、
オリジナルのメニューも作り出される場所。
ひき肉の南アフリカのバブーティの味は忘れられません。

壁にはピカピカの鍋や大鍋たちが占めており、
彼女曰く「鍋のサイズは人をもてなす気持ちの表れ」

ローマン家に毎週一度はお邪魔していた私以外にも、
多くの人が心のこもった美味しい料理でもてなされていました。
ローストチキンや、スィートのような人参のグラッセ、
フルーツケーキの数々が美味しい匂いとともに思い出されます。

料理の周りにはいつでも楽しい語らいと家族の温もりがありました。

実母も、ジルお母さんも、料理を囲んで
人が集うという文化を私に教えてくれました。

〜〜〜〜

料理を作って食事を囲んで人と集うゆんたくが趣味だった私ですが、
5年前、入院生活を送っていた時、感覚を失ってしまった右手を見て、
もう料理で人をもてなすことは叶わないと寂しく思いました。

そんな時、ある本が無性に読みたくなりました。

その本のことをどこで知ったのか、
あるいは誰に聞いたのか全く思い出せませんが、
夜中にふと思いついてベッドの上でアマゾンに注文していました。

それは「Delicious Revolution 美味しい革命」
アリス・ウォーターズ著 でした。

写真の美しい大きな本で、
「食を通して世界に変革をもたらそう」というアリスさんの
ライフスタイルがわかる内容で、
読んでいてワクワクしました。

1944年生まれのアリス・ウォータースさんが、
アメリカの西海岸で大学生活を送っていた頃、
若者は新しい生き方を模索して右往左往。
ヒッピー活動に影響される人々も増え、
中には過激な行動を取る人たちもいました。

そんな中でアリスさんはデモや対立、
暴力では世界は変えられない、
「世界中の人に共通の食べることを通して世の中を変えよう」とバークレーに
オーガニックフードの「シェ・パニーニ」というレストランを一軒オープンしました。
今から40数年前のことです。
今でもその一軒だけの営業で、
アメリカで最も予約の取れないお店と言われています。

まさに「美味しい革命」なんですね。

アリスさんの「美味しい革命」の基本レシピには
こんなことが書かれています。
今の私たちの生活でも大切なヒントがたくさんありました。

■ Eat locally and sustainably.
(地元の食材、そしてずっと作り続けられる(採り続けられる)食材を食べよう)

■ Eat Seasonally.
(季節にに敏感に、旬のものを食べよう)

私たちの欲で、輸送費をかけて
遠路から食材を取り寄せて店頭に並べたり、
季節感を無視して、
一年中食材が手に入ることを良しとしていませんか。

■ Shop at Farmer’s Market.
(産直のファーマーズマーケットで生産者の顔の見える食材を買おう)

アメリカにファーマーズマーケットを広めたのがアリスさんです。

どこでも手に入るものとは違い、
各地にある「道の駅」に並ぶ地元の食材には
元気なエネルギーがいっぱい。
スーパーマーケットでも生産者の顔写真が付いていると何だか安心します。
また形が不揃いだからと出荷をはじかれる食材も減りますように。

■ Plant a Garden.
(庭に食べられるものを植えて収穫しよう)

食べ物はお金を出してお店で
手に入れるだけではなく、
もっと身近に作物の収穫を体験したいもの

■ Conserve Compost and Recycle.
(資源を大切に、堆肥を作って土を肥やし、再循環させよう)

野菜のくずは捨ててしまわずに、
それで堆肥を作って土地に戻し
再び作物が育つ環境を作ること、
つまり再循環という考えにもっと理解を深めましょう。

■ Cook Simply.
(調理はシンプルに)

オーガニック(化学肥料を使わないで育てた)な食材は
塩、胡椒、オリーブオイルなどでシンプルに調理すると
食材本来の味がしてそれだけで美味しいです。

■ Cook Together.
(みんなで一緒に料理をしよう)

■ Eat Together.
(みんなで食卓を囲んで食べよう)

都会に住む人も、キャンプでは
皆で料理というイベントに参加するから
お互いの距離も縮まり子どもたちに
とっても特別な体験になるのですね。
北欧ではヒュッゲという家族、友達とともに
料理をしてテーブルを囲み語らう文化があります。

現在の日本では家族でも ともに食卓を囲まない
「孤食」の習慣がある子どもたちも少なくないと聞きます。
なんらかの事情で家族が揃わない場合には、
地域が大きな家族となって子どもたちを受け入れる取り組みを考えたいです。

■ Remember — Food is Precious.
(食物は貴重だということを忘れないで)

日本で日々 廃棄される食材は膨大な量。
セカンドハーベストという、
食材を無駄にしない取り組みも注目されてきましたが、、、

“資源は有限、無駄なく大切に、
感謝して食と向き合いたい”と改めて思いました。

中野裕弓

中野 裕弓

人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター

中野 裕弓HIROMI NAKANO

19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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