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- 南雲 吉則
- 2018.06.15
- 健康

紫外線は危険か?◇
先日NHKの天気予報で、「5月は紫外線が強いので紫外線対策をしてください」
といっていました。紫外線はそれほど有害なのでしょうか。
昔の日本人は夏になると真っ黒に日焼けしていました。今は子どもの日焼けに
まで気を使う時代になりました。
そのきっかけは1980年代のオゾンホールの報告です。地球はオゾン層に包まれて、
紫外線が地上に到達しにくくなっています。しかしフロン汚染によってオゾン層に
穴があいて紫外線量が増えたおかげで皮膚がんが増えるというのです。
しかし実際、日本人の皮膚がんの頻度はオーストラリア人の100分の1ですから、
さほど気にする必要はありません。
それより皆さんが気になるのはシミでしょう。
紫外線には悪玉のB波と善玉のA波があります。確かに真夏の炎天下でB波を浴びる
と「サンバーン」というやけどを起こし、皮が剥けてシミを起こしやすくなります。
しかし秋から春にかけての紫外線、真夏でも朝夕の紫外線はA波といってやけどは
起きず、「サンタン」といってメラニン色素によって肌が浅黒くなるだけです。この
色素はB波をシャットアウトするためのバリアですので、逆にA波紫外線を浴びること
によって、シミを予防することができるのです。
しかも紫外線を浴びた肌はビタミンDという大切なホルモンを作ります。ビタミンD
が不足するとカルシウムの吸収が少なくなって骨粗しょう症になることはよく知られています。
また「冬季うつ病」といって、紫外線の少ない時期や地域にはうつが発症しやすいのです。
過度に紫外線を避けることもうつの原因となります。
さらにビタミンD不足はアレルギーや糖尿病を起こしやすくします。
私の専門分野でいえば、大腸がん、乳がん、卵巣がんは、ビタミンD不足で起きやすくなり、
ビタミンDの補充によって予防ができます。
紫外線がそんなに有害であれば、赤道直下にあれほど多種多様な生物が進化したことが説明できません。
肌に優しく安全なコスメを用いて、適度に紫外線を浴びることによって、健康な体を作りましょう。
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医師 乳腺専門医
博士南雲 吉則
1955年生まれ。乳腺専門医、医学博士。慈恵医大・近畿大学の非常勤講師、韓国東亜医科大学・中国大連医科大学の客員教授。慈恵医大学卒業、東京女子医大形成外科、癌研究会付属病院外科、慈恵医大学第一外科乳腺外来医長を経て、バスト専門のナグモクリニック院長。 「女性の大切なバストの美容と健康と機能を生涯にわたって守る」をモットーに札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5院を飛び回る。がん患者の命を救う食事と生活術「命の食事」を提唱。テレビ出演・著書多数。